患者さんの容体が急変したらどうしよう。
もし、何かのサインを見逃してたら。
自分のせいで患者さんに取り返しのつかないことが起きてしまうんじゃないかと不安になりますね。
そんな風に思い詰めてしまうと、看護師としてのメンタルが限界に達してしまうかもしれません。
そこで、今回は看護師が急変時に抱く自責の念への向き合い方や心のケア方法について紹介します!
- 急変の要因は看護師だけではない
- 急変後のメンタルケアの方法
- 自責の念を手放すためのコツ
看護師が急変時に自分のせいだと感じる理由
看護師が患者の急変時に自分を責める気持ちを抱えてしまうのは、さまざまな理由があります。
その中でも、看護師の強い責任感や、予兆を見逃したことへの後悔、上司や医師からのプレッシャーが主な要因と言えるでしょう。
このような理由から、多くの看護師が急変時に自分を責める気持ちに苦しんでいます。
それでは、それぞれの要因について詳しく見ていきましょう。
看護師の強い責任感
看護師は患者の命を預かる職業です。そのため、患者の状態悪化を自分の責任と感じてしまう傾向が強いのです。
特に真面目で責任感の強い看護師ほど、患者の急変に対して自分を責めがちです。
「もっと注意深く観察するべきだった」「自分のせいで患者の命を危険にさらした」などと考え、自分を追い詰めてしまいます。
例えば、以下のような状況で看護師は自分を責めやすいですね。
- 患者の容体が急変し、集中治療室に運ばれた時
- 急変前のバイタルサインの異常に気づけなかった時
- 自分の担当患者が急変したことで、医師から厳しく指導された時
このような状況下で、看護師は「患者の命を預かる自分には力不足だった」と感じ、強い自責の念にさいなまれるのです。
しかし、看護師の頑張りだけでは防ぎきれない急変もあるのが現実です。
むやみに自分を責めるのではなく、できることとできないことを冷静に見極める姿勢が大切ですね。
予兆を見逃した後悔
急変後に「あの時のあの症状が予兆だったのでは?」と考えてしまうのは、看護師なら誰もが経験することです。
些細な変化も見逃さず、重大な事態を未然に防ぐことが看護師の腕の見せ所。
だからこそ、予兆を見逃したと感じた時の後悔はとても大きいのです。
急変の予兆には以下のようなものがありますが、見過ごしやすいのも事実です。
- バイタルサインのわずかな変化
- 患者の訴える些細な違和感
- 顔色の悪さや冷や汗などの徴候
例えば、夜勤中にバイタルチェックした際に、血圧が少し低めだったとします。
しかしその時は様子を見たが、翌朝急変が発生。
振り返ってみると、血圧低下が急変の前兆だった可能性があります。
このように、予兆を察知できなかった悔しさから、看護師は自分を責めがち。
「あの時、もっと慎重に判断していれば」と後悔の念にかられるのです。
しかし、急変の予兆をつかむのは、経験豊富なベテラン看護師でも難しいもの。
すべてを見抜くことは不可能と言っても過言ではありません。
「完璧な看護師」なんていないのだと自分に言い聞かせることが大切です。
上司や医師からのプレッシャー
患者急変の際、上司や医師から厳しい指摘を受けることも珍しくありません。
このプレッシャーから、看護師は自分を責める気持ちを強めがちです。
「なぜもっと早く異変に気づけなかったのか」「看護師としての観察力が足りない」など、上司や医師からの叱責の言葉は看護師の自尊心を大きく傷つけるでしょう。
さらに、医療現場には以下のようなプレッシャーもつきものです。
- ミスが許されない医療現場の厳しさ
- 先輩看護師の完璧な仕事ぶりへの劣等感
- バイタルサインを完璧に把握するよう求められる重圧
例を挙げると、急変時の記録やタイムライン作成を一から何度もやり直しさせられ、徹底的に叱責された経験のある看護師も多いはず。
そのような経験から、「自分は未熟な看護師だ」と自己評価を下げてしまいます。
しかし、誰もが経験を積む過程で失敗はつきものです。
上司の指導が厳しいからといって、「自分には看護師が務まらない」などと考える必要はありません。
むしろ、失敗から多くの学びを得られたことに価値を見出すことが重要ですね。
プレッシャーに負けず、前を向いて歩みを進めることが看護師の成長につながるはずです。
患者急変の原因は看護師だけじゃない3つの事実
「自分さえしっかりしていれば、急変を防げたはず」。
そう考えてしまいがちな看護師の皆さん。でも、本当にそうでしょうか?
実は、急変の原因は看護師の力だけではどうにもならないことも多いのです。
患者の病状の変化、医療チームとしての課題、不可抗力な要因など、看護師個人の責任ではないことが急変の原因となるケースは少なくありません。
もちろん、看護師としてできることは可能な限りやるべきです。
しかし、それでも防ぎきれない急変が存在することを理解しておく必要があるでしょう。
それぞれの事実について、詳しく見ていきましょう。
患者の病状の変化
患者の急変は、もともとの病気の進行によって引き起こされることが少なくありません。
つまり、看護ケアが原因ではないのです。
特に高齢者や重篤な基礎疾患のある患者は、容態が急変しやすい傾向にあります。
例えば、以下のようなケースでは、事前の予防は難しいと言えるでしょう。
- がんの急速な進行による容体悪化
- 慢性疾患の急性増悪
- 高齢による臓器の機能低下
そもそも、急性期病棟や高度救命救急センターなどでは、容態が不安定な重症患者を受け入れています。
予期せぬ急変のリスクは常にあると言っても過言ではありません。
そんな中で懸命に働く看護師に、急変の責任を負わせるのは酷というもの。
「看護師の力が及ばないこともある」という事実を認識しておくことが大切ですね。
医療チームとしての課題
医療はチームで行うもの。急変の原因が、医療チーム全体の課題に起因することもあります。
例えば、以下のような問題が潜んでいる医療チームでは、急変リスクが高まると言えるでしょう。
- 医師と看護師の連携不足
- 看護師間の情報共有の悪さ
- 医療スタッフ全体の知識・スキル不足
患者の安全を守るためには、医療チームのコミュニケーションが欠かせません。
しかし現実には、多忙な医療現場でスムーズな情報共有ができないこともしばしば。
例えば、医師が診察時に患者から聞いた重要な情報が、看護師に伝わっていなかったために、異変の発見が遅れてしまった。
そんな事態は決して珍しくないのです。
このように、急変の背景には組織的な問題が潜んでいる可能性があるのです。
責任を一人の看護師に負わせるのは、問題の本質から目をそらすことにもなりかねません。
むしろ、医療チーム全体で「急変を防ぐためにできること」を考え、改善していく姿勢が重要なのではないでしょうか。
不可抗力な要因の存在
そして何より、看護師の力ではどうしようもない不可抗力な要因が、急変の原因となることも忘れてはいけません。
「突然の心停止」「予期せぬ合併症の発症」「医療機器のトラブル」など、まさかの事態はいつ起きるかわからないのです。
例えば、健康状態に問題がないと思われた患者が、ある日突然心肺停止を起こしてしまった。
病院中を探しても、心停止の原因がわからない。そんなケースもないわけではありません。
- 原因不明の心停止や呼吸停止
- 突発的な脳梗塞や心筋梗塞の発症
- 医療機器やシステムのトラブル
もちろん、看護師はこのような事態を常に想定しながら仕事をしています。
だからこそ、いざ急変が起きた時、「自分が悪かった」と責任を感じてしまうのでしょう。
しかし、不可抗力による急変は、誰の責任でもないのです。看護師が自分を責めても何も解決しません。
むしろ、「起きてしまったことを前向きに受け止め、そこから学びを得ること」が大切だと言えるでしょう。
急変後のメンタルケア【看護師の心を守る5つの方法】
患者の急変に遭遇し、自分を責める気持ちに襲われている看護師の皆さん。
あなた自身がケアを必要としているのかもしれません。
急変時のショックやストレスから心を守り、立ち直るためには、適切なメンタルケアが欠かせません。
ここでは、あなたが実践できるセルフケアの方法をご紹介します。
一人で抱え込まずに、まずはセルフケアを始めてみましょう。
少しずつでも、自分の心と向き合う時間を作ることが大切です。
それでは、具体的な方法を見ていきましょう。
気持ちを言語化する
急変後の自分の気持ちを言葉にすることから始めましょう。
自責の念、怒り、悲しみ、絶望感…。胸の内にあるものを、言葉として認識することが大切です。
「こんなに頑張ったのに、どうして防げなかったのだろう」
「自分はまだまだ未熟な看護師なんだ」
そんな風に感じているなら、その気持ちをそのまま言葉にしてみて下さい。
紙に書き出すのも良いでしょう。言葉にすることで、自分の感情と向き合うことができます。
- 日記やノートに気持ちを書き出す
- 一人で声に出して気持ちを語る
- 信頼できる人に気持ちを打ち明ける
辛い気持ちを言語化する作業は、涙なくしては語れないかもしれません。
でも、泣くことを恐れる必要はありません。感情を吐き出すことは、心の浄化作用があるのです。
言葉にできない複雑な思いもあるでしょう。
でも、まずは「言葉にする」というステップを踏むことが、気持ちの整理につながるはずです。
同僚と思いを共有する
ひとりで気持ちを抱え込まないために、同僚とつながることを意識しましょう。
同じ医療チームのメンバーなら、あなたの思いを理解してくれるはずです。
急変時のことを振り返り、お互いの思いを語り合う。
そんな何気ない会話から、大切なヒントが見つかることもあります。
例えば、こんな風に思いを共有できます。
- 一緒に急変時の状況を振り返る
- 互いの思いを言葉にして伝え合う
- 急変を防げなかった無力感を分かち合う
同僚の何気ない一言で、救われる思いがするかもしれません。
あるいは、同じ思いを抱えている仲間がいると知って、安心できるかもしれません。
一人じゃない、仲間がいる。
その安心感が、心の支えになってくれるはずです。
辛い時は、同僚の手を借りながら乗り越えていきましょう。
専門家に相談する
自分を責める気持ちから抜け出せないなら、専門家に相談するのも一つの方法です。
メンタルヘルスの専門家から、適切なアドバイスをもらうことができるでしょう。
職場のメンタルヘルス相談窓口を利用するのも良いですし、信頼できるカウンセラーに相談するのもおすすめです。
プライバシーが守られる環境で、安心して思いを打ち明けられます。
専門家は、あなたの感情を客観的に受け止め、適切な助言をくれるはず。
自分だけでは気づけなかった視点を提供してくれることでしょう。
- メンタルヘルス相談窓口を利用する
- 信頼できる精神科医やカウンセラーに相談する
- 専門家から客観的な意見をもらう
専門家の力を借りることは、弱さの表れではありません。
むしろ、自分を大切にする勇気の表れだと言えるでしょう。
一人で抱え込まずに、助けを求める勇気を持つこと。それが、あなた自身を守ることにつながるのです。
ストレス発散法を見つける
溜まったストレスを発散する方法を見つけることも大切です。
楽しみや気分転換の時間を作ることで、心にゆとりが生まれるでしょう。
自分なりのリラックス法を持つことが、ストレス対処に役立ちます。
ぜひ、自分に合ったストレス解消法を見つけてみて下さい。
例えば、こんな方法があります。
- 好きな音楽を聴いてリラックスする
- ヨガや瞑想でリラックスする
- スポーツで体を動かしてストレス発散する
- 友人と楽しく過ごして気分転換する
ストレスと上手に付き合う方法を身につけることは、看護師としてのキャリアを長く続ける秘訣でもあります。
自分なりのストレス発散法を見つけて、心の健康を保つ習慣を作りましょう。
リフレッシュした心と体で、また明日から患者さんに向き合えるはずです。
自分を認め、許す
そして何より大切なのは、自分自身を認め、許すこと。
過度に自分を責めたり、完璧を求めたりしないことが大切です。
「あの時、自分はベストを尽くした」
「今の自分にできることを精一杯やった」
そう自分に言い聞かせてみましょう。
急変を防げなかったことは事実かもしれません。
でも、それはあなたの責任ではありません。「自分はダメな看護師だ」などと思わないでください。
- 自分なりに精一杯やったことを認める
- 自分を責めるのではなく、自分を労う
- 完璧を目指さず、できることを一つずつ積み重ねる
時には、自分を甘やかすことも必要です。「よく頑張ったね」と自分をねぎらい、心を休ませてあげましょう。
自分を認め、自分を許す。その勇気と優しさを持つことが、メンタルケアの第一歩なのです。
あなたはひとりじゃありません。自分自身が、あなたの味方でいてあげてください。
急変経験者が語る「自分を責めない」ためのコツ3選
ここからは、実際の急変経験者から学ぶ、自分を責めないためのコツをご紹介します。
同じ経験をした仲間からのリアルな声は、あなたの心に響くはず。
辛い経験をバネに、前を向いて歩んでいるナースたち。
そこから学べるヒントを、ぜひあなたの支えにしてください。
先輩ナースたちの経験から学び、あなたなりの乗り越え方を見つけていきましょう。
事実と向き合う勇気
「急変の事実から目を背けずに、現実と向き合うことが大切」と語るのは、10年目の救命救急病棟の看護師Aさん。
Aさんも新人の頃、先輩ナースとケアをしていた患者さんを急変で亡くした経験があります。
「自分のせいで助けられなかった」と責め続けた日々。
でも、ある時、こう考えられるようになったそうです。
「起きてしまったことは、もう変えられない。でも、事実を直視して、そこから学ぶことはできる」
- なぜ急変が起きたのかを冷静に振り返る
- 急変の原因や背景を可能な限り明らかにする
- 事実を受け止め、そこから学びを得る
辛い事実から目を背けるのは楽かもしれません。
でも、現実から逃げては、何も変わらないのです。
「辛いことから学び、成長する。それが、急変を経験したからこそ、私にできること」と、Aさんは力強く語ってくれました。
完璧を求めすぎない
15年のキャリアを持つ看護師長のBさんは、「完璧を求めすぎないことが大切」と言います。
Bさんは、スタッフの急変時の支援にも力を入れています。
「自分を責める気持ちはよくわかる。でも、あなたは悪くない」そう伝えるようにしているそうです。
「私たちは神様じゃない。できることには限界がある」
「今の自分にできることを、できる範囲でやればいい」
部下の看護師に、よくそう語りかけるそうです。
- 患者の命を救えなかった自分を許す
- 今の自分にできることを精一杯行う
- できないことを責めるのではなく、できることに集中する
「看護師は完璧であるべき」そんなプレッシャーに押しつぶされそうになることもあるでしょう。
でも、完璧を求めすぎては、いつか折れてしまうのです。
「できないことを嘆くよりも、できることに全力を尽くすことが大切」と、Bさんは優しく微笑みました。
学びと成長の機会にする
そして、20年以上のキャリアを持つ看護師長のCさん。
Cさんは、「急変を、学びと成長の機会にすること」の大切さを教えてくれました。
「辛い経験は、看護師人生の糧になる」というCさん。「後悔や反省をバネに、もっと良い看護がしたいと思えるから」と言います。
「あの時、こうしていれば」という後悔から、次に生かせる教訓を得る。
「もっとこうなりたい」という思いから、学ぶべきことを見出す。そんな姿勢が大切だそうです。
- 後悔から学び、次の患者ケアに生かす
- 急変事例から学び、知識とスキルを高める
- 理想のナースになるために何をすべきか考える
「急変は、私たち看護師にとって避けては通れない経験。
だからこそ、そこから成長するチャンスを見出すことが大切なのよ」とCさん。
つらい経験をプラスに変える。そんな逞しさと優しさを、Cさんから教わった気がします。
まとめ:看護師急変自分のせいだと思ってしまうあなたへ伝えたい
いかがでしたか?急変で自分を責めてしまう看護師の皆さんへ、お伝えしたかったことは以下の5つです。
- 看護師が急変時に自分を責める理由を知ろう
- 急変の原因は看護師だけじゃないと理解しよう
- 適切なメンタルケアを実践して心を守ろう
- 先輩看護師の経験から学ぼう
- 急変を乗り越え、成長するあなたを信じよう
急変は、どんなベテランナースでも心が張り裂けそうな経験です。
あなただけが責められるべきことではありません。
でも、私は信じています。
あなたはこの経験を糧に、もっと強く、優しい看護師になれると。
今は一人で抱え込まず、仲間の手を借りながら一歩ずつ前に進んでください。
あなたの味方はたくさんいます。そして何より、あなた自身が、あなたの最大の味方です。
つらい経験を乗り越えた先に、さらに成長したあなたが待っている。
そう信じて、一緒に歩んでいきましょう。